おしぼり

そもそも、彼は私を女性だと、女だと思ってはいなかったのかもしれない。
気の合う友人、ガールフレンド。
話してて面白いし、頭も悪くないし、そんな感じ。

わたしは振られた理由をぐるぐると反芻する。
1週間して、ようやく頭が回転しだした。

今日から会社が始まったこともあるだろう。

仕事があってよかった。
勤務中は気が紛れる。
やはり気を抜けないし、体も動かす。

それに幸い、メインの社内翻訳の仕事は現在ない。
専門性の高い文書を英文から日本文へと翻訳するのは、とても頭を使う。
やりがいがあるが、「こんなのムリ」と毎回涙目でなんとかやっている。

そんな真剣勝負、今はとてもできない。
ぶざまな代物は出したくない。
職業人としてのプライドだ。

思わずため息が出る。
さっき年明けの書類整理をしていたとき、記入したボールペンの筆跡が滲んでいるのに気付いた。
涙が書類に、滴り落ちていたのだ。
それすら気づかないなんて。

ランチは、ひとりで食べた。
和やかな談笑、愛想笑いなど、今は出来ない。
「ごめん、知り合いとランチする予定なんだ」。
嘘をついて、外食した。

あいかわらず食欲がないので、ここはひとつ奮発してお寿司屋さんに入った。
人目につかない角席を希望した。
温かく蒸された白いタオル地のおしぼりが出される。

わたしはそれを目に押し当てた。
じんわりとした温もりが伝わってくる。
最近は、衛生上のためか乳白色のビニールに包まれた、薄っぺらで人工的なおしぼりが主流だ。

でもやはりおしぼりはこうじゃなきゃ。
油断しておしぼりに目をうずめたわたしはバカだった。
涙が止まらない。

こんなビジネスタワーの東京のど真ん中で、わたしは泣いていた。
目が腫れるから、人目があるから、いろんな言葉で自分を戒める。
が涙はとまってはくれない。

風俗体験漫画
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