きらきら

振り返ると16だか17だかの高校2年以降、いつも誰かに恋された。
当時私は遅刻の常習犯。
ケッパン制裁され、向かう校舎の窓を見上げると、きらきらの瞳の群れが鈴なりだ。
渡り廊下、移動教室、学生食堂、体育の校庭、下校途中。

いつも誰かが私を見てる。
少女から女性へと変わるにつれ、周囲は少年から男へと変化した。
彼らから向けられる、痛いほどの所有欲。
加えて健やかで誠実な保護欲求。
さらにはそれが叶わなかったとき、理不尽にも向けてくる憎悪の念。
波動のように空気を震わせ伝わってくる、それらはもはやサイキック。
消しゴムを拾ってあげた、気さくに声をかけた、ゴミ拾いを手伝ってあげた、楽しくお話をした。
これら行為がなぜそう繋がるんだろうか?理解に苦しんだ。
そうして今一度立ち止まり考えてみた。
相手はともかく、この私に何の利益が?と。
長年のサンプリングの結果、彼らの幻想は手に取れた。
大切に庇護してあげたい。
謎のベールを優しく剥がしたい。
ずっとこの手で守ってあげたい、そんな感じの穏やかで激しい渇望と束縛だ。
彼らの手元に残るのは?それは繊細で美しくも儚い恋の夢。
彼らが渋い中年になりさらに偉いさんの老年期に入る頃、取り出して眺める美しい青春の偶像。
その頃実際生きる私は?皺くちゃのおばあちゃん。
家族に大変よく尽くしたあげく、地位も名誉もナッシング。
都合よくあちらこちらで捏造され保管される私の自己像。
いつの間にやら、無料配信。
冗談じゃねえよ!と、ちゃぶ台をひっくり返したくなる。
私の真価ってそれかな?他にはないのかな?と一人ひとりの肩を掴んで揺すぶりたい。
けれど誰一人、私の醜い叫びに耳をかしてはくれない。