ソフトクリーム
「嫉妬したんじゃない?」
なんで?誰に?って聞くと、友だちはへっ?って心底意外そうな顔をした。
「誰って、あたしのカレシに決まってるじゃん」
なんで、そうなるんだろう。
でも、なんか友達もそのカレシも、置き去りにされたというのに一向に慌てていない。
海辺で、しかもそろそろ日暮れなのに。
彼は何に怒って私達3人を置き去りにして、ひとり車で帰ってしまったんだろう?残された私達はどうやって帰れっていうのだろう?こんな、車でしか来れないような海岸で。
「タクシー代、払ってくれるよね?」
へっ?耳を疑った。
「だって、彼が帰ったんだから、その彼女であるあなたが払うのが当然じゃん」
いつの間にやら自分だけに買ってきたソフトクリームを、ひとり舐めている。
ペロペロと、赤い舌先を真っ白なソフトクリームに擦りつけている。
きっと、ふたりの夜はスゴイんだろう。
そんな場違いな想いがふと脳裡によぎる。
「ちょっ、ちょっと冗談じゃないわよ。なんで私が?ワリカンでしょ?普通」
しどろもどろで答える。
「だって、そっちが誘ってきたから来たんじゃん」
強い目で、でもあっさりとかえされた。
彼女の茶髪は潮風の下、お人形みたいに夕日に透けている。
私は、泣きたくなった。
うらめしそうな顔で、彼女のカレシに目を遣ると、気まずそうに目を逸らされた。
ああ、どうして彼は帰ってしまったんだろう。
「もういっかい、電話してみなよ。彼氏、今頃反省してるかもよ」
ソフトクリームのコーンを愛おしそうに頬張りながら、彼女はそう続けた。
告白の代償
怖いので携帯の撮影モードで後ろを確認したら前の彼女で、全身に悪寒が走って青ざめてしまった、というのです。
告白の代償は大きかったのです。
それから数ヶ月毎日ずっと背後から見ているだけの彼女に怖くて声がかけられないとのことで、このままでは今の自分の彼女に被害が及ぶのではないか、結婚に支障がでるのではないかと毎日不安で仕方がなく不眠症になっているのだそうで、どうにか彼女を彼女の周りの友達で説得はできないだろうかと友達伝に連絡が入ったのだそうです。
後輩はその話を聞いて、あまりに話が当てはまりすぎるのでそれは確実に彼女であると分かったそうです。
ちょうど同じ時期の頃に彼女が「最近彼の顔色が凄く悪いの、彼女に迷惑をかけられてるのよ、体もなんだか前よりやせ細っていて…私が傍にいたら体調管理なんてしっかりやるのに」と電話を受けたことがあるのだそうです。
こうして後輩は友人たちと話し合い、彼女を傷つけずになんとか彼を忘れさせようと努力したのだそうです。
しかし、彼女の思い込みは激しくいくら言っても言うことを聞かなかったそうです。
仕方がないのでとうとう「彼は彼女と結婚するの、もう諦めて他の男性を探した方がいいよ」と必死に説得したところ、一度だけ、彼女が涙を流して「知ってるわ!彼女と結婚するのは知ってるの!でもどうして私じゃないの?どうして私と結婚してくれないの?こんなに好きなのに!こんなに好きで待っているのに!」
荒れたらしいです。