貧しさに負けた

彼のことは心から信頼していた。
後にも先にもこの私にこんなにも誠実な人はいない、と思っている。
それは誰よりも、彼本人よりも分かってる。
幸せな彼との幸せな未来。
彼の辛辣な励ましやツンデレっぷり、それに20代に思えないあの老獪さ。

誰もが羨む幸せはこの私のもの。
だからこそ、私は彼と結婚などできない。
なぜなら後ろ暗い過去を持つ魔性の女なのだ、私は。
貧しさに負けて、援助交際を続けた過去を持つ。
物欲に負けた訳じゃない。
家族を養うという、朝ドラの主人公顔負けの健気さからだ。
でも、罪は罪。
相手にも社会にも迷惑をかけた覚えはない。
でも、罪は罪。
私は汚れてしまった。
それに自分の実家だって恥ずかしい。
彼の立派だろうお家柄とは、雲泥の差。
いわば恥のオンパレード。
恥の上塗りに上塗りを重ね、かろうじて生きてきた。
それが私。
でも、彼は違う。
ポカポカと陽の当たる家に生まれ育って、清く正しい学生時代を送り、順調に社会へと漕ぎ出した。
真面目に仕事をして、成果を得て、そして最愛の伴侶を得る。
そんな彼に対して、相反する二つの感情が芽生えだしたのは、いつごろだろう?。
なるほど、彼は私を愛し幸せにしてくれるだろう。
援助交際は黙っておくとしても、家柄どうのなんて、むしろ愛を増す要素となるかもしれない。
彼の一生はなんとも眩しい。
何もかも手に入れる人生。
でもそれって純粋に彼の成した努力の賜物?。
屈折した怒りがハラワタにじんわりと染み渡る。

男女の仲は見えない糸で結ばれている

もって生まれた遺伝と恵まれた家庭環境。
産まれる前から定まった社会的な格差と貧困。
不公平じゃない?なんか不公平じゃない?彼のせいではないけれど。
受益者になりたい気持ちと、私という客体によって彼の人生が完璧になるのを阻みたい気持ち。
彼のご家族は貧民の出の私に寛大だろう。
私は彼にもそのご家族さまにも低姿勢で生きていくのだ。
実家の家族は定期的に恥を上塗りしてくれるだろうし。
なんで?それって私が悪いの?。
私のせい?気がつくと拳を痛いほど握りしめていた。
それに彼にはもっと穢れなきふさわしい相手がお似合いだ。
こんな歌詞の演歌、あったよなあ。
汚れものを引き取るには、彼は清潔で善良過ぎるのだ。

恋バナや恋愛相談、夫婦間の不協和音など、強烈な話

20代の友達が付き合っているのが40代の女性だった

23歳の男友達が付き合っている彼女が40代のバツイチ子持ちで、驚いた。
彼は結婚はする気はないそうだが、もう付き合って3年になるらしい。