折り紙つき
「元気だして、男なんていくらでもいるじゃん」。
同じ職場とはいえ、彼女と会い続けなければならないのは、悲劇だ。
ふたりとも一般事務。
しかも同じ上司についている。
だから当然のように仲良くしなきゃ、やってけない。
ランチも毎日、一緒。
売上が好調だからいいものの、業績が悪化でもしようものなら即座にどちらかがクビだろう。
こんな仕事、変えはいくらでもいる。
そしてその場合、クビを切られるのは私だ。
なぜなら彼女の立ち回りのうまさは、社内でも折り紙つきだ。
「彼女だけとは、合コンしたくないよね」。
彼女を知る友人は、そう言った。
抜け目ない。
彼女の通ったあとは、ぺんぺん草も生えていない。
そう噂される女。
「でもさ、同じビルだからエレベーターで顔とか合わすよね。
そん時はどうするの?あたしだったら平気だけど」。
会社のランチルームは当然セルフサービスになっている。
好きな小鉢やおかずをカウンターから取り、最後にIDカードでお会計をする。
そして月末にお給料から天引きされる、というシステムだ。
健康食品を扱う会社だけあって、けっこう味も栄養バランスも優れている。
でも、社内の女の子はサラダなんかが主流だ。
ごはんなどの炭水化物は「少なめで」と、ごはん係のおばさんに言うのが常識となっている。
私だけだ。
「てんこ盛りで」とお願いするのは。
すると、おばさんは笑って大盛りについでくれる。
貧しい一人暮らし。
ここでカロリーや栄養を摂らなくって、どうしますか。
そんな社内でも、彼女は極端にスレンダーだ。
「でも、男に振られたことなんて、経験あるんでしょ?あたしは、あんまないけど。
あ、でもね振る方がツラいんだよ」。
これには流石にむっときた。
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