そばかす
女にもいろいろな種類がいる。
振られた後の私は、相変わらずグルグルと彼の相手を考えていた。
食欲はようやく出てきたものの、喉元に依然涙の塊が居座る。
どんな女性なんだろう?。
何名かが思い当てはまった。
例えばあのちりちりソバージュパーマの女の子。
米国短期留学者にありがちな、自由でヒップな感じの子。
持ち帰った“異文化経験”により、自分を最高にクールだと信じて疑わない。
それに彼女はかなり彼を狙っていたし。
私なら彼を落せるわ。
そんな自信すら滲ませていた、そばかすだらけで鼻が高く、やや可愛いファニーフェイス。
仕事熱心な彼を意識して、昼もロクに休みもとらずに必死で仕事してたっけ。
なんて小賢しい女。
でも、所詮は女の浅知恵。
彼が好きなのはこの私。
お気の毒ですが、彼はどちらかというと、古風でクラシックな風情がお好みなのよ。
それにあなたの戦略は透け透けの見え見えですし。
あなたって色白というよりは、色素が薄いだけなんじゃないの?私のたまご肌と違って。
ふんっと鼻から苦々しさを吐き出す。
時にはその憎い恋敵の背中を冷やかに眺めては値踏みした。
もちろん、彼が離席している間に、だ。
加えて私はスーツフェチ。
特にネイビー。
そしてパリッとした白いシャツ。
さらにトラッドでブリティッシュなトレンチコートを羽織られた日には、鼻血は噴出。
足元のフロアーには、流した真っ赤な鮮血が沁みとなって拡がる。
授業中おもらしちゃった子どもみたいに、必死でその沁みを隠す私。
彼はこの組み合わせが断トツで他の誰よりも誰よりもよく似合う。
そんな彼と彼女は、案外ありだったのかも。
私が去った後、彼女は抜け目なくチャンスをモノにしたんだろうか。
トレンチコートに腕を絡ませ高笑い。
街を闊歩するあのチリチリパーマ。
エスニックなポンチョにブーツとかなんとか、自由で奇抜なファッション。
きっと彼女はこう思う。
そうね私は自由人、でもね、隣を見てよ。
こんなに常識的なエリートに愛され支えられてるのよ、わたし。
想像するだに、グラグラと煮え湯がハラワタで沸騰。
もう爆発寸前。