愛の夢
信じ切っていたわたしがバカだった。
わたしは、うなだれた。
もう心の整理をどうつけたらいいのか、分からない。
見るものすべてが彼に関係があるように思える。
ひょっこりと壁の中から彼が現われそうな気すらする。
私は、振られたのだ。
というか、彼を失ったのだ。
彼だけじゃない。
彼という存在だけじゃなくて、彼への信頼。
それに勝手に夢見てた愛の夢。
愛し愛される美しい愛の夢。
これらすべてが突然失われてしまった。
わたしは三日三晩、何も口に入らなかった。
辛うじて水と最低限の食パンだけをモグモグと咀嚼した。
味なんて感じない。
ダイエットしたい、痩せたいと年中言っているのに、一週間であっけなく5キロは減ったろう。
喉がからから。
お正月の連休前に言われたのは幸いだった。
こんな状態では出勤など到底無理だった。
「好きな人がいるんだ。
素直ないい人で、この人なら一緒にいると幸せって感じられる。
そんな人なんだ」。
って、そんな余計な情報いらないわ。
実家の母には帰省しない理由を、そのまま伝えた。
「まあ。
元気だして」。
これだけ。
彼女は振られたことがないのだ。
超美人で男は寄ってくるものだと未だに思っている。
真剣に恋愛したことなどない人間だ。
布団を頭からかぶり、私は呻いた。
胃袋からお腹が空いた、と伝達がある。
けれどこの布団から這い出すことなどできっこない。
現実を直視できないのだ。
彼ともう会えないなんて。
彼がわたしを必要としていないなんて。
彼なしのこの先のわたしの人生は、真っ暗だ。
スーツフェチのわたしは、彼と平日待ち合わせするのが大好きだった。
会って何分か経つと、彼はキチンと締めていたネクタイを緩める。
その仕草が最高。
それにいつも悩みを相談した。
するとじっと耳を傾けてくれた。
励ましながらも的確なアドバイスと批判をくれた。
それらすべては、永遠に続くと思っていたのに。