上司

嫉妬しないといえば、嘘になる。
彼とずっと一生一緒にいる女性。
誠実で実直で、どうやら彼女に惚れ込んでいる彼。

彼はどんなに頼もしい夫になるだろう。
彼はどんなにかいい父親になるだろう。
その隣にいるのは、わたしじゃない、彼女だ。

胸がずきずき疼いた。
心臓の在り処がはっきり分かる。
嘲笑うかのように、心臓が左胸、その所在を存在を示す。

ずきずきと、ナイフで突き刺し、えぐり取られるように心臓が確実に時を刻む。
嫉妬など生易しい表現は当てはまらない。
ずばり、喪失だ。

それにただ、羨ましいだけ。
ただ、彼女が彼から受け取るだろう幸せを想像するだけで、涙が止まらないだけ。
私は、バカだ。
こんなにも彼を好きだったなんて、振られて初めて分かった。

会社は定時でさっさと引き上げた。
慧眼の上司は、何事かあったことを察知してくれているらしい。
無口な背中は温かい。

日本人の肚芸は、何も老獪な政治家だけの妙芸じゃあない。
使い方さえ正しければ、こんなにも温かい。
私をデスクに呼びつけて、これまで一緒に作成してきた翻訳文書ファイルを持ってこさせた。

パラパラとめくる。
今見直しをする必要はどこにもないはずだ。
上司は黙ったまま、ページを繰り続ける。
一緒に一か所に視線を落せる相手。

物言わぬとも何かを共有する人がいる、この心丈夫さ。
そうだ。
無為な日々だけじゃない。

上司はファイルを手渡した。
「これ、見直しておいて。
今月はさしたる仕事も入ってこないから、備えてといてよ」。

私はずっしりと重いファイルを静かに受け取った。
席に戻った私は、涙が落ちないように必死にファイルに目を凝らす。

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